君のことを忘れてはいけない。

三日月が雫を落とすとき、銀色のそよ風が吹いて僕と君の隙間を通り抜ける。ひどく強い、決定的な豪雨が降りそうな、そんな曇った夜空だけが一年も二年も続いている。

白と金色の光の粒がちらちら泳いでは宵闇に消えて、静寂、静寂と張り詰めた僕の心と。君の笑う目元が綺麗。

涼しい風は無性にかなしいから、このまま消えてなくなりたい。

君に近づきたい僕はたぶん明日の朝には消えている。そんな気分を何度も何度も手にしては手放して息をしている。吸って吐いて吸って吐いて、息をし続けるために生きているのか、数分後に死ぬとしてもいまを生きるために生きているのか。

月がまた雫を落とす。瞬いて光が消えてゆく、君の目元がまた笑う。