そして人はどこかに還る

向こうでちらちら揺れてる光があるよ、無数の。水平線は霞む光の帯となってぼくの目に映る。東京の夜景を眼下に海のように見ていて、ひろいひろいなぁ、テールランプが泳いでいる。ぼくはこの都市のことを知ってるようで何も知らない。はるはるゆらゆら、ひろがる、この海を、高くから見渡せる場所を、いくつか知っているけど、どこから見ても違う表情で、ぼくは昔好きだったともだち達の横顔を思い出す。どこかの街のエスカレーターの一段上から見下ろす、夕陽を受けたともだちの横顔がきれいだったこと、隣り合わせの席だと、笑ったかおがよく見えないから少し残念で、気づかれないように盗み見たこと。ほかの人と話すときのともだちは、ぼくと話すときのともだちとは別の人みたいで、少し寂しくて、同時に少し安心もしたこと。ぼくはあなたたちのすべてを知ることはできないし、ぼくはちゃんとひとりだ。大丈夫、この広くて密度の高い都市で、ぼくは馬鹿みたいにともだち達に惹かれながら、彷徨っているよ、何年経っても。真っ直ぐ燃える朱い鉄塔を眺めるぼくの視線が変わっても、昔のぼくをなくしても、ぼくはちゃんと孤独でいるよ。