秋の夜長に

全てがいつか終わること。全ての関係性が、いつか何らかの形で別れを迎えるのだということ。だからこそ、今この時がかけがえがなく輝く、なんてことは分かってる。分かってるけど、怖いね。笑い声を、体温を、失いたくない。今年はやけに、鈴虫の声が聞こえるね。それはきっと、去年よりも一昨年よりも、私が寂しいから。ひさしぶりに吸い込んだ冷たい秋の夜の空気が、記憶よりもずっと甘く切なく肺に届いて、びっくりした。緩慢に流れる時間、「いつかうしなう」と誰かが耳元で囁く、泣きたくなる。いつか私の手を離れていくとしても、この瞬間を、この感情を、今は失いたくない。