Entries from 2020-04-01 to 1 month

熱湯は注いで

駆ける。駆ける。駆ける。少しだけ厚い底の焦げ茶のローファーが、小雨降るアスファルトを蹴るたびにジャリッと小さく音を立てる。小刻みに息を吐く。視線は真っ直ぐに正面を見ている。黒い学ランの角張った肩、すらりと伸びている脚は少し不恰好に見えるく…

自我と絶望のような何か

「今に飛び込むことを何故そんなに恐れるの」 君にはわかりやしない。後先のことなんか考えずに今を生きることのできる君には。今に誠実であること、それはすなわち、過去を疎外していくことでもあるのだ。 「恐れているんじゃないよ」 「じゃあなんだってい…

この身

「死にたくない」 些細なことで、ピーラーで皮を剥くみたいに、少しずつ削られていく心。 美しいものを、他人と共有したいと思うこともあるし、誰にも踏み入られたくないと泣きわめくこともある。 知った気になんてならないで、私のことを。 なんて思う自分…

花の色は

どこまでも続く桜並木を、風の強い日に歩く。 白い花びらが舞う中を歩く、瞼のすぐそばを、指先を、掠めていく花びら。 風のカーテンが膨れて、大量の白い細かい花弁が流れてゆく。 いつか、高校の授業中、廊下側の冷えた席から、ふと窓の外に目を向けたなら…