Entries from 2020-01-01 to 1 year

裏通りにて

愛してるという言葉はなんて軽薄なんだろうね。君の口からそんな言葉が出てくるなんて。君の睫毛は陽の光を受けてきらきらしていた、君は普段の君よりも少しだけ素直で、元気で、可愛らしかった。私は誰の幻影を君に重ねて見ているのでしょう。君の夢を見た…

青い薔薇

星を眺めるように、冷たい月を眺めてください。僕は隣りでただ、君の冷淡さだけを信じていたい。僕たちは決して砂漠の真ん中で美しく消えたりはできないこと、死んでも星にはなれないことを、痛いほどよくわかっている。私は確信している、君もそれがわかっ…

ほつれる

「お前の優しさは偽物だ」 と、誰かが私の頭の中で叫んでいて、私は今すぐヘッドホンを当ててうるさいロックでかき消したい。何が本当の優しさか分からないです。簡単に相手の気持ちを分かった気になるのは優しさではないのだろうし、私の頭の中で渦巻いてい…

夜間飛行

微炭酸、喉を通るときにじんわり熱く、感じているのは私だけ? 慣れない刺激は五割増、遠くにあるもの八割増、くそしょうもねぇ、くそしょうもねぇ全て、憎らしくて仕方ない、名前のないものは認めてくれない社会。高層ビル、最上階のベッドの上で眠るなら、…

傷跡

こんな寒い曇り空の夕方に、街に出かける時、私は何の曲を聞いたらいいのだろう。この、私の過去も未来も全てがどうでもいいような、でもいとしい人達だけはどうでもよくないような、そんな気分にしっくりくる曲ならもうずっと前から存在してない。どんな音…

洗濯物を干す人

季節の変化を、濡れた洗濯物を干す時と取り入れる時に感じるようになった。 週の半分以上の時間を、家に引きこもって過ごしている私は、昼前にのそのそと起き出し、部屋着のまま洗濯機を回してテレビを見ながら朝ごはん(昼ごはん?)を食べる。洗濯が終わった…

郷愁

私の生きている時間は今ここだけで、私の大好きな人達は確かに私の生きている時間の中にきらきら輝きながら現れるのに、君の生きている時間を私は決して知ることはできない。そちらは寒いですか。いかがお過ごしですか。君が今よりずっと小さかったときから…

21℃

秋はひとり。 日は既に短くなっている。夜になればしとしとと静かに雨が降り始める。虫は鳴きやまない。私のいないあの街で、あなたのいないあの公園で、今この時もあの時の私たち二人が、つまらない冗談に笑い合っているのかもしれないとふと思う。 文字に…

知らないの魔法

コンビニに買い物行ってくる。そう言って、家を出てきた。お母さんてば、口を開けばお父さんの悪口ばっかりなんだから。 家を出て真っ直ぐ歩いて、右にひとつ、左にふたつ曲がった角のところに、いつものようにその公園はある。小さすぎるその公園の、ペンキ…

新月の夜に。

夜の砂浜には、さざ波が打ち寄せ潮の匂いを運んでくる。新月の今夜、星は真っ黒な空いっぱいに瞬き、波は星あかりを受けてつやつや光る。足首を包む海水、きみのしずかな背中の後ろを歩く。わたしが歩む度、水がきらきら揺れて光るのはなんで。夜光虫だよ、…

猛暑日

重なり合う二匹の虫の音が。私はそれがスズムシなのかマツムシなのかまるで分からないけど、眠れない夜はお世話になってます。虫は何のために鳴いているのかもよく分からないけど、私はそれが立派な音楽だと思っている。道端の雑草の中から虫の音が聞こえる…

顔のない君

蒸し暑くずるずると長引く梅雨の夜に、開いた小説に、「冬の匂い」という文字を見つけて、でもそれが全くもって嗅覚に結びつかないので悲しくなる。 「おもては冬の匂いで、街の匂い」 冬の雑踏の匂いって、どんなだっけ。夜、街路は冷たい雨に濡れて光り、…

調和

雨上がりの渋谷の夜は、アスファルトが黒く濡れていて、街頭とネオンの色とりどりの光を溶かしこんでいる。 靴擦れの痛みを抱えたまま、ざくざく歩く。足先に落とした視線、隣からは小さな話し声と笑い声が聞こえる。 強く朗らかな態度でいることに、疲れ切…

境界

"触れ合いに逃避 するのは禁止" 電車の揺れる音に混ざって、イヤホンから流れてくる聞き慣れた曲の、聞き慣れたはずのフレーズが、ピリッとした刺すような痛みを心に残す。さっきまで居た部屋、煙草の香りを思い出す。 触れ合いに逃避、すれば、そこはかとな…

シロツメクサ

道端の雑草でも、私は全然良かったんだ。 咲いた白い小さな花を、摘んだ夜の冷たい風、今でも時々思い出す。 街には星が散らばっていて、おあずけされてた幸福は、私を芯から震わせた。 小さな午後、小さな公園、風が吹き抜け葉がこすれ。 制服の袖を通るそ…

におい

12月。人に誘われて、とあるキリスト教系の大学で行われるクリスマス礼拝に行った。その名も燭火礼拝。蝋燭の燭に、火と書いて燭火。その日は寒い金曜日で、前の用事が長引いたために慌てて会場へと向かった。冷たい空気の中をバス停まで走ったから、喉の奥…

爆心地

東京は、朱い炎を中心にして、まわっている。 仲のいい男友達と、赤坂のラーメン店を出て、特に行くあてもなく夜の東京を歩いた。くだらない雑談をし、コンビニの前に座り込んで、プリンとスイートポテトを半分こした。自販機で缶コーヒーを買って飲みながら…

白昼の銀河鉄道

「おはよう」耳に心地よい低い声が、遠くから聞こえる。眩しい。薄く開けた瞼の向こう、柔らかな日差しがいっぱいに差し込む窓のそばに、幻みたいな君の姿が見える。「…おはよう。早起きだね」「いや、さっき起きたとこだよ。それに…時計見てみなよ」「……十…

Sid and the Daydream

彼。彼は、真っ黒なコートを着ていた。冬。冷たい雨の静かに降る日。私たちは駅の出口で待ち合わせをした。手にした本からふと顔を上げると、向こうから、黒いコートを着た彼が近づいてくる。透き通るように白い肌。雨に濡れたのか、その黒髪はわずかに湿っ…

Nocturne

彼と会うときは、いつも雨が降っていた。 新宿三丁目の小さな喫茶店を出て、通りを歩く。蒸し暑い空気の中、彼と一緒に都庁の展望台に向かっていた。昼下がりの空には今にも雨を降らしそうな灰色の雲が低く垂れ込めていて、雑踏には梅雨特有の閉塞感が漂う。…

ブログを始めて一年が経ちました。

70。 このブログに一年間で投稿した記事の数だ。この一年間でのアクセス数は約6000。ちまちまと書き留めてはちまちまとSNSで宣伝していたが、6000という数字を見ると、塵も積もれば山となるのだなと実感させられる。この一年の間に、ブログを覗きに来てくだ…

2020年春

世界が、薄い半透明の膜を通して、ぼんやりと見えている。 朝、重たい身体を布団から引きずり出して、ものを食べて、洗濯をし、本を読んで、スマホを触り、空腹に耐えかねてまたものを食べ、風呂に入り、またぐずぐずと意識を眠りに落とす。それを繰り返す。…

夕波まぎれ

砂嵐。不明瞭な輪郭を夢に見る。目覚めても目覚めても白い天井。ものを食べてからだを洗いぐずぐず意識を眠りに落とす。 やわらかい灯りが好きでした。私のこの手の中でいやに白く光る箱は、何を届けてくれますか。「正義」「平等」「偏見」「軽率」「生存」…

熱湯は注いで

駆ける。駆ける。駆ける。少しだけ厚い底の焦げ茶のローファーが、小雨降るアスファルトを蹴るたびにジャリッと小さく音を立てる。小刻みに息を吐く。視線は真っ直ぐに正面を見ている。黒い学ランの角張った肩、すらりと伸びている脚は少し不恰好に見えるく…

自我と絶望のような何か

「今に飛び込むことを何故そんなに恐れるの」 君にはわかりやしない。後先のことなんか考えずに今を生きることのできる君には。今に誠実であること、それはすなわち、過去を疎外していくことでもあるのだ。 「恐れているんじゃないよ」 「じゃあなんだってい…

この身

「死にたくない」 些細なことで、ピーラーで皮を剥くみたいに、少しずつ削られていく心。 美しいものを、他人と共有したいと思うこともあるし、誰にも踏み入られたくないと泣きわめくこともある。 知った気になんてならないで、私のことを。 なんて思う自分…

花の色は

どこまでも続く桜並木を、風の強い日に歩く。 白い花びらが舞う中を歩く、瞼のすぐそばを、指先を、掠めていく花びら。 風のカーテンが膨れて、大量の白い細かい花弁が流れてゆく。 いつか、高校の授業中、廊下側の冷えた席から、ふと窓の外に目を向けたなら…

君が眠りにつくまで、枯れないで花達 君は僕を見つけないで、どうか夜の底まで 僕は愛する人誰からも見つからない場所へ、深く深く潜っていくよ、ひとりで どうしても逆らいたい夜の時間に、 君は一人でどこまでもゆく 白い光が差してくるまで、それもいいけ…

ヘンゼルとグレーテル

日常に染まりゆく。 ここが私の居る場所なんだと、居場所以外の場所にゆくたび強く思う。一年前の私が持ってなかったものを今の私は持っているし、一年前の私が持っていたものを今の私は失っている。二年前、三年前、四年前だっておんなじこと。私というもの…

硝子

壊れかけの人間と、壊れた関係性とが同居しているこの空間で、私は生も死も見たことがないのに、勝手にすべてをわかった気でいる。一度つまずいたら、誰もが再び歩き出せるとは限らなくて、彼が陽の光を浴びなくなって何年経つのだろう。つまずいた時から時…