21℃

秋はひとり。 

 

日は既に短くなっている。夜になればしとしとと静かに雨が降り始める。虫は鳴きやまない。私のいないあの街で、あなたのいないあの公園で、今この時もあの時の私たち二人が、つまらない冗談に笑い合っているのかもしれないとふと思う。

 

文字にも残さなかった。あの頃の私は書き残すことをしていなかったから。忘れてしまえば、初めからなかったことと同じだろうか。私の記憶の反芻の中にしか、あなたの存在を確かめることはできない。

 

肺に染み込む孤独の香り。黒く濡れたアスファルト。革靴の底がじゃりじゃりと音を立てる。

 

幸せからの垂直落下。心臓の弱い方は御遠慮ください。突き放されること、拒まれること、ある日突然去られること。それは私を永久に苦しめる、毎年毎年決まった季節に。時限爆弾のようだ、暴力も優しさも。

 

「もう二度と、どこにも行かない」と交わす約束、その危うくもあたたかい部屋の中に、ひと時の安堵を溶かして抱きしめる。幸福はすべて、いずれ絶望として私たちを蝕むとして、それでも私たちがひとりでいることをやめる理由があるとしたら、それは一体何であろうか。

 

秋雨が泣く。