郷愁

私の生きている時間は今ここだけで、私の大好きな人達は確かに私の生きている時間の中にきらきら輝きながら現れるのに、君の生きている時間を私は決して知ることはできない。そちらは寒いですか。いかがお過ごしですか。君が今よりずっと小さかったときから、君と共にある場所、人、記憶、想像しようとして立ち尽くす。雪原、風吹く田んぼ、ミルクティー。私には決して触れることができないということが、少し悔しくもあるけど、それは何か、この世の真理であるような気がします。尊い、孤高の真理であるような気がします。同じ島国のどこか遠い遠い小さな町の寒夜の底で、君が今も、あたたかな住処の中で、ひとり静かに幸福であるところを想像する。どうかどうか、お元気で。足は冷やさぬよう、お腹も冷やさぬよう、夕焼けを沢山見て、夜の底を沢山歩いて。