#tanka (2019.7.24~2020.2.2)

 

 

青色の日々

 

蝉の声世界は依然美しく芝の緑よ我を慰む

 

生春巻きの皮の中から見た世界恋を失うぼやけた世界

 

ラベンダーの綺麗なスカート衝動買い良い香りのする心が欲しい

 

あかねいろ影をたずさえ物思う口づけしたい君の瞳に 

 

雨粒の作る輪っかのうつくしさ君の心の方がきれいよ

 

おやすみとおはよう重ねた二年間今どこにいる何をば思う

 

 

 

 

傷口に蜂蜜

 

駅までの道の君の鼻歌に耳を澄ましてそれなんの曲

 

もう武装はしなくていい愛を見つけたからヒールじゃなくてスニーカーを履く

 

昔ほど聞かなくなった青いベンチ歳をとるとはかくも寂しき

 

見上げたら落葉(らくよう)枝が寒そうで私を置いて秋がまたゆく

 

指先と足の指先つめたくてあついお湯とこたつ下さい

 

居眠りの君の耳たぶ赤いのを赤子を見守るように微笑む

 

通り雨窓のあかりの琥珀色ゆらゆらとけて路面に滲む

 

スクランブル交差点の街路樹にも紅葉は来る

 

君落ちる眠りの底へ二人でも私は行けないその中までは

 

午前二時しづかな夜にひとつだけ吹いた風はどこから来たの

 

水色の秋空滑る飛行機が一号館の壁に消えゆく

 

行き止まりふたりの末路見ないふり今日もジュースの上澄みを吸う

 

おすすめの曲も忘れてしまうくらい遠く離れてひとときの夢

 

 

 

 

冬は日常の輪郭がぼやける

 

元彼のLINEはあるけど会わずして今年も暮れゆく来年も

 

雑踏に混じると同時に1上げる僕しか解らぬ曲のヴォリウム

 

信号機その先見ゆるタワレコがビルに乗っかるオムライス

 

左様なら君の左手体温が走馬灯になるまで生きる

 

くるぶしを出しても夏は来ないぞと冬の星座に見下ろされてる

 

体温計燃えてる夜のため息と湯船の底から見上げる湯船  

 

からからのらくだの首のその上で浴びるエビアンミネラルウォーター

 

真夜中の竜巻轟音さよならは言えない夜のわたしたち