この身
「死にたくない」
些細なことで、ピーラーで皮を剥くみたいに、少しずつ削られていく心。
美しいものを、他人と共有したいと思うこともあるし、誰にも踏み入られたくないと泣きわめくこともある。
知った気になんてならないで、私のことを。
なんて思う自分だって、知った気でいるんだ、他人のこと。
愛情が、まごころが、足りていないと思う。ぱさぱさに乾いていますよ、それはもう。
綺麗なものをみて悲しくなるんだ。胸騒ぎはさっきから収まらない。どうしてこの目に美しく映るものは、近づくといつだって恐ろしいのだろう。私を手招きしているように見えて、さっと刃物を突き立ててくるんだ、いつもいつも。
明日死んでも後悔しないように生きろなんて言うけど無理。私にはまた会いたい人がいるし、まだ見たいものがたくさんある、まだ読みたい本だってある。
私が死んだあとの世界で、私が書いた文章が、懐かしむための材料に使われるところ、想像して凄く嫌だ。
仲間はずれとか、友達がいないとか、そういう話ではなくって私はひとりぼっちだし小さいし、世界に参加していないのかもしれない、と思う。
たまたま生を受けて、80年したらこぼれ落ちて無かったことにされるんだ。
死は怖い。
いずれ疎外されていくならば、なぜ私に、考える頭を、感じる心を与えたのか。そんなものすらなかったら、きっと怖くもなかったのに。