完璧な人へ
空を見上げる度、彼のことを思い出す。
彼は、まるで雲のようだ。遠く高く漂っていて、そうして空を漂うことの幸福にひとり満たされている。掴み所がなくて、ふわふわと幸福で。
どこにでもひょいと顔を出す。そんなところも雲みたいだ。この星のどこに居ようとも、彼の存在は不意に薫る。眩しくて、尊い人。
しかし彼は、きっと私の愛情も優しさも、必要としていないだろうと、思う。
彼は、強いのだ。
ひとりでも、自分の世話がきちんとできる。悲しい時には星を見て、幸せな時には青空を見る。彼の真っ直ぐな強さに、私はただ憧れる。でもきっと彼に、私が埋められる隙間などないのだろうと思う。だから、いつまで経っても、私は空を、雲を、ただ見上げているだけなのかもしれない。