花の色は
どこまでも続く桜並木を、風の強い日に歩く。
白い花びらが舞う中を歩く、瞼のすぐそばを、指先を、掠めていく花びら。
風のカーテンが膨れて、大量の白い細かい花弁が流れてゆく。
いつか、高校の授業中、廊下側の冷えた席から、ふと窓の外に目を向けたならば、陽だまりがそこにはあって、横長の枠の外を、白い小さな花びらが大量に舞っていた。
あの日の私の頭の中に鳴り響いていた曲は、もう何年も聞いていない。
あの日私は、何をそんなに必死になっていたのだろう。何をそんなに刻みつけていたのだろう。一秒後のことすら考えずに。鮮やかだ、眩しい。私は何を置いてけぼりにしてここまで来てしまったのだろう。
見下ろしたアスファルトにできた花びら溜まり。いやに冷静な頭で、散る花を見ていた。
今年の桜が最後の桜になった人間が、何人いるのだろうか。私だって、一年後もこの花吹雪を見ている保証なんてどこにもないのだ。
桜を見て、昔のことと、死ぬ時のことを考えるなんて、とっても嫌だと思うけれど。
美しさと正しさと今現在を、疑いもせずまっすぐ見つめることが若さなのだろうか。