Entries from 2020-01-01 to 1 year

#tanka (2019.7.24~2020.2.2)

青色の日々 蝉の声世界は依然美しく芝の緑よ我を慰む 生春巻きの皮の中から見た世界恋を失うぼやけた世界 ラベンダーの綺麗なスカート衝動買い良い香りのする心が欲しい あかねいろ影をたずさえ物思う口づけしたい君の瞳に 雨粒の作る輪っかのうつくしさ君の…

流動と燃焼

現在地は不明 、確かなのはこの身のみ。 流れゆく景色、視界で捉えて。 目的地は未定、足の向くまま、神頼み。 移ろいゆく話題、真実なんてなくていい。 ただこの嗅覚だけを、頼りにしてたい。 苦いコーヒー、緩慢に時間が漂う。 沈黙が研ぎ澄ます、理性と知…

正しさなんて要らない

「傷つかないで済むように賢く生きる」ことを覚えてしまったなら、十代の私の精神は本当に死んでしまうと思っている。 衝突を避けるための当たり障りのない受け答え。私たちは本当は分かり合えないということを、心のどっかでは理解してるくせに、分かり合え…

ちよこれいと

さっきから、冷蔵庫が低い呻き声を立てている。 「結局私を救うのは、言葉なのか体温なのか。」 分からないでいる。乾いたページを繰る乾燥した指先。第二関節のしわの隙間に小さな痛みが一瞬走った。これは紙で切った。切ったはずだと思い目に近づける第二…

夏待ち

暖冬、ですね。 私の甘えや感傷を徹底的に殺してくれない半端な寒さなんて、憎いだけだ。 冷気が皮膚を刺す時、世界全部が自分の身体の外側に切り離されている気がする。ため息を吐けば、私と冬の境界が震えて白く染まる。抗えない寒さの中に一人でいる時、…

解剖学

浮き足立った気持ちなんていうのは、結局のところ自分大好きってちょっとでも思えるから生まれるんだ。ちょっと謎めいてて一匹狼の君が、私にだけは猫みたいに甘えてくれるのがくすぐったくて嬉しいのも、"私にだけ"だからだ。「こんな話、あなたにしか出来…

鍋の底に泡立つ気泡を見ていた ばばばばば、しゅしゅしゅしゅしゅ あなたは、愛する人の顔面が交通事故でまるきり変わってしまっても、その人と共に生きたいと思えますか あなたが言う「愛してる」が、すべて自己愛に帰結するものだとして、あなたはそれでも…

空と川と優しさ

からっぽのわたし

今の私はからっぽだ。 心身ともに、からっぽ。それは清々しいからっぽではなくて、虚しさが付きまとっている。同じからっぽでも、晴れた休日の朝に電車に乗っている時のからっぽは、とても爽快なのだ。自分はからっぽだから、身軽で、どこにでも行けると思え…

枝葉考

ぴしぴしぴし と、ガラスにヒビが入るような音を立てて、こまかい木の枝が夜の曇り空の灰色の上を走ってゆく。短く細い枝の黒色が、隅々にまで丁寧にその腕を伸ばして灰色の背景を埋め尽くす。 「雪の結晶みたいじゃない? 枝の先って。」 君はそう言って、…

名前はつけずに

美しい言葉が紡がれる。 それは彼の口から、彼の指先から、彼の瞳から。 真夜のやわらかい月明かりのような、 とめどなく流れる滑らかな水のような、 春の昼下がりのあたたかい陽の光のような、 言葉たち。 私は、彼に恋をしているのでしょうか? それとも、…

図書館という死

どんなに世界から切り離されたように感じても、図書館だけは僕の味方だ。そう、思っていた。図書館は、僕のことを傷つけない。死んだ人達の言葉が地層みたいに降り積もった埃っぽい本棚の森は、僕のことを傷つけない。傷つけないこと、傷つかないことがいつ…

恋文

午前二時

フロアに流れるダンスミュージック。恵比寿の、恵比寿ガーデンプレイスの真反対の路地にひっそり佇む建物の一階では先刻より、嬌声とグラスの割れる音がひっきりなしに響いている。俺はなんでこんな所にいるんだ。薄暗い照明の下では、酔った男と女が何組も…

愛の狭間

「愛してるよ」 私の耳元で、泣きそうな声であなたが囁いた言葉に、後ろめたい気持ちになるのは何故でしょうか。私もあなたが好きで、あなたとこうすることが好きで、あなたの首の匂いが好きなのに。 「うん。私も」 すぐにこう返せなかったのは、あなたが私…

冬晴れ

全てが白く冷たく固い。 教室の後ろ、窓側の席で開いた詩集のページの上に、窓から差す冬のかすかな光が落ちて広がる。刻まれた文字が、細かく震えている。ペットボトルの中の水を通った光が、白い机の上に落ちて揺れる。照明を落とした教室で、いっそう、冬…

断末魔

イヤホンから流れるドラムが鼓膜を叩く なりを潜めたロマンチシズム 沈めてなだめて見ない振り 感傷のにおいが薫って殺して引き裂いて ぬるま湯はずっと幸福だと信じる悪足掻き 時間が直線でも円環でも私は此処には居ない 赤い血赤い肉白い肌辛うじて繋ぎ止…

無題

真夜中、人恋しさ、空腹、冷たい足、煌々と光る液晶、冷蔵庫が立てる低い機械音、秒針の音、絡まったイヤホン、誰か、誰かの声が、聞きたい、