図書館という死

どんなに世界から切り離されたように感じても、図書館だけは僕の味方だ。そう、思っていた。図書館は、僕のことを傷つけない。死んだ人達の言葉が地層みたいに降り積もった埃っぽい本棚の森は、僕のことを傷つけない。傷つけないこと、傷つかないことがいつも良いこととは限らないんだ。僕はこの死の森で、誰に話しかけることもできなかった。紙と、そこに書かれた文字は、やけに乾いた手触りで、そこに温度はなかった。湿度もなかった。死、死、死。僕は、四方八方を死んだ人達の、もう話すことも傷つけることも傷つけられることもできない人達の足跡を写した本に囲まれていた。「ねぇ」小さく呼びかけても、返事はない。"どこにも居場所がなかったら、図書館に行けばいい"って誰かが言ってた。図書館も息苦しくなってしまった僕は、どこに行けばいいですか。