ほつれる

「お前の優しさは偽物だ」

と、誰かが私の頭の中で叫んでいて、私は今すぐヘッドホンを当ててうるさいロックでかき消したい。何が本当の優しさか分からないです。簡単に相手の気持ちを分かった気になるのは優しさではないのだろうし、私の頭の中で渦巻いている推測と最善手は所詮私の想像でしかない。それならば本当の優しさは一体なんですか。私は誰の気持ちも私の気持ちのようには解らないのだから、私のばら撒く優しさはエゴなのかもしれない、と思う。けれど、他者の気持ちを全く同じ立場に立って感受できる人なんているのだろうか。人は他人にはなれないから、そんなこと原理的に無理なのではないだろうか。ならば優しさなど最初から存在しないかもしれない。わたしたちにとって、そんな偽物の優しさは、暗闇から一方的に投げつけられる色とりどりの花束なのかもしれない。受け取って欲しい受け取って欲しいという気持ちに彩られて鮮やか過ぎる色の花たちが、投げつけられては萎れて枯れていくのかもしれません。本当の優しさなんてものを、人類は持ち得ないのかもしれず、ただ惑星があり水が流れ陽の光が注ぐということだけが、優しさとして私たちの足元に流れ着くのかもしれない。