平衡

夜の中を走る電車の中を走りたい。駆け回って、飛び回って、みんなが僕のことを、頭のおかしい人だと思うだろう。でも君たちの方がおかしいって言いたい。だって窓の外には無数の明かりが凄いスピードで流れていってる。先頭車両の方を見れば、くねくねと線路に合わせて形を変える、この箱は生き物じゃないか。夜の中を駆ける箱に乗って、僕はこんなに眩しい歌を聞いてる。

 

何が大人だとか、何が正しいだとかを、知った振りをする友達はみんな嫌いだ、そんな言葉を疑いもなく吸い込んでは、徐々に安定していく僕も嫌いだ。揺らがないように、転ばないように、間違えないように、穏やかであるために、そんな主義が僕の頭を段々巣食っていく、救えないんだよ誰のことも、だって僕はこんなに汚れてしまった。掬いたかった、君の見ている世界を。それさえも不実だと誰かが言う。

 

息切れしてもいい、白い目で見られてもいい、沈んでもいい、行き倒れてもいいんだ、本当は。本当は僕はそんなふうに生きて死にたい。きっとずっとそう言いながら生きながらえる。