九月某日、山梨県にて。

河口湖近くでBBQをした後、小雨の降る中、山梨県上野原市の山間部にある秋山温泉へ。少しだけ肌寒く秋の訪れを感じる。あついお湯に体を沈める瞬間の幸福。今年も温泉の季節がやってきました。
露天風呂の扉を開けた途端に鈴虫の声が耳に飛び込む。少しだけぬるい湯に体を浸し、少しだけ寂しい風を顔に受ける。湯船の表面に橙色の灯りが溶けて揺れていた。

わずかに雨の匂いがする空気を肺いっぱいに吸って、車に乗り込む。街灯もない真っ暗な夜道を、ヘッドライトの明かりを頼りに進む。ふと窓の外に目を遣ると、山の斜面にぽつぽつと白い明かりが灯っている。小さな村の小さな生活が確かに灯っている。山の麓には湖が広がっているようで、黒々としたその水面に、村の灯りがひとつふたつ、吸い込まれるように溶けて光っていた。締め切った車の中からでも聞こえる、鈴虫の声。りーんりんりん。やがて雨が強まり、車体を打つ雨音に、虫の音も遠のく。