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今年が終わっても私は終わらないし、新年が来たって私は新しくなんてならない。

 

十二月も気づけば下旬に差し掛かっていた。日曜日、東京は今週で一番の冷え込みらしい。天気予報を確認する習慣は、少し前まではあった。降水確率100パーセント。事後的に知る、雨予報。乗り慣れないバスの乗り場を探す。去年の暮れに買った革のブーツに雨水が染み込んで、足先に感じる鈍い冷たさ。イヤホンから流れる、進まないジャズ。

 

年末は、破滅に向かっているような気がする。頭の片隅に、大晦日までの日数をカウントダウンする赤い数字。バスの窓に張り付く雨粒。互いにくっついて、段々重さを増して、ガラスを伝うのはいつか見た涙。

 

進んだり止まったり右に曲がったり左に曲がったりする心許ない箱の中、私は閉じ込められている、雨の中に。冬の中に。夜の中に。寒さの中に。赤や緑や白やオレンジの光が、街の光が、窓に張り付く無数の雨粒に映り込む。道路の水溜まりに絶え間なく溶けてゆく雨と信号の赤。ゆらぐ、ゆらぐ、ゆらぐ光とゆらぐ水、ゆらぐ私とゆらぐバス。季節が次々死んでも終わらない私、いつまで、どこまで。

 

 

「次、とまります」

 

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椿本ゼミ第十一回に際して執筆。お題「窓」